最近の素材価格高騰とリサイクルの関係について(2007.06.05)
値上がりが続く各素材・・・・・今回は少し固いお話しを
最近、石油、鉄、非鉄金属などが値上がっており、5~6年前の低迷期に比べると4~5倍の価格となっており、企業もコスト上昇に悲鳴をあげている。これは中国、インドなどの途上国の経済発展によるところが大きく、世界的な資源争奪戦などとも言われている。5~6年前の資源の状況を考えると、別世界に来てしまったような錯覚に陥りそうだ。
2000年の頃は逆に素材価格が安すぎてリサイクルの危機にあった
5~6年前ということで、特に思い出すのが2000年頃から立て続けに成立されたリサイクル法だ。当時、資源価格は安く、リサイクルをしてまで資源を取り出して売るようなことは経済的でなかったため、リサイクルは低迷していた。更に、1990年代から、廃棄物の埋め立て場の残りが極端に少なくなっており、あと3年もすればごみの行き場がなくなり、日本中ごみがあふれかえってしまうというような危機感に覆われていた。
そこで、リサイクルを進めて、ごみの埋め立てを少なくしようという方針が出てきた。具体的なモノで振り返ってみると、自動車やビルの取り壊しで鉄スクラップというものが出る。その価格をみると、現在はトン3万円と言われるものが2001年の頃にはトン6千円台にまで落ち込んでいた。鉄スクラップの値段が安すぎて、自動車のリサイクルも危機的な状況にあった。6千円だって売れればいいという話ではない。使われなくなった自動車を鉄スクラップにするためには、分解して鉄を取り出す作業が必要となる。この費用がトンあたり1万円以上かかる。となると、6千円でしか売れない鉄スクラップを取り出すために、1万円を超す費用をかけるということは採算が合わない。逆に3万円で売れるなら、極端な話、拾ってきてでもリサイクルを行う。
最近では、「拾ってくる」どころかマンホールの蓋や公園にあるステンレス製の滑り台や手すりまでも盗まれるという常軌を逸した事件もあるが、ステンレスはトンあたり50万円近くなっている。
このように資源安や埋立て場の不足などが理由となって、「自動車」や「家電」や「パソコン」などのリサイクル法ができてきた。
資源高であれば自然と進むリサイクルだが、国内のインフラとしてのリサイクルルート維持も重要
ここからわかることは、資源の値段が安くて大量にあれば、リサイクルをしてまで使う必要がないため、なかなかリサイクルが進まないが、高くなればリサイクルは進みやすいという経済原理を我々は目の当たりにしている。この資源不足という状況は戦後の混乱期以来忘れられていたものだ。
ところが、中国、インドなどの資源を膨大に使う市場が突然現れてきたため、ほんの5~6年の間にタイムマシンに乗って戦後物不足の世界に行ってしまったような変化を経験しているのだと思う。
現在の資源リサイクルというのは、この中国の高度成長に目くらましにあったような状況にあるが、これでいいということで当然ない。重要なことは、海外に頼るだけでなく、国内でのインフラとしてリサイクルの維持が必要で、そのためには、必ずリサイクル費用の負担が(多い少ないは別として)必要になるということだ。
(2007.06.05)
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