失われた10年の大きな変化~変わり行くお金の流れ~(2007.05.01)
日本国債の格付けは上がったけれど・・・
先ごろ、スタンダード・アンド・プアーズという米国民間格付け会社は、日本国債の格付けを1ランク引き上げたと発表した。引上げ理由は、景気回復から経済成長が見込めることや、構造改革が進み財政や金融政策の正常化にも踏み出している点を評価したもの。
ただ、評価を引き上げたと言っても先進7カ国のうちでは最低の「AA-」から「AA」になっただけで、米国・英国等5カ国はAAAで、日本はイタリアに次いで下から二番目の評価に止まっている。
この日本国債の格付けを悪化させてきた巨額の財政赤字など、いわゆるバブル崩壊以降の失われた10年の間に大きく変化した日本経済の3つの点について考えたい。
国債格付けを悪化させた日本の財政赤字
日本の財政はバブル崩壊以降の不況に対処するために大型経済対策で大量の国債を発行した。特に90年代後半は不良債権を抱えた都市銀行などに公的資金を使うなどして急激に財政状況が悪化した。国の借金は91年度末で300兆円程度であったのが、現在800兆円に近づいている。
因みに長野県でも県債残高をみると91年度末で約620億円が2005年に約1,600億円と増加。今後も高齢化の進展にともない医療・年金・福祉などの社会保障の負担が大きくなっていくことから、一層財政を圧迫していくことが予想される。
2つに家計の貯蓄率の低下
高齢化は貯蓄率も下げる。なぜなら、高齢者世帯は今までしてきた貯蓄を取崩す年代であり、その年代の増加により、全体の貯蓄率は低下してきている。
1970年代には貯蓄率は20%を超え、貯蓄好きの国民と言われたこともあったが、80年代から徐々に低下し、バブル崩壊後加速し、最近では過去最低の3%程度まで落ちている。
貯蓄の減少は何を引き起こすか。貯蓄は企業の設備投資や政府の赤字を支えてきた日本の成長エンジンだったため、大切な成長エンジンのひとつが無くなるということになる。
幸いに、現在は1,500兆円の長年蓄えてきた個人の金融資産があるため持ちこたえられるが、将来的に貯蓄が少ない国になると、足りないお金は外国から借りなくてはならなくなる。
それにしても1,500兆円の個人金融資産という事を考えると、改めて日本はお金持ちだなと思うが。
3つめに遂に日本は貿易で稼ぐより、金利収入などで稼ぐ国になったこと
昨年の春頃公表された2005年の国際収支統計で、金利などの所得収支の黒字がモノを売って稼ぐ貿易収支の黒字を抜いた。所得収支の黒字は約12兆6千億円、貿易黒字は約9兆6千億円。
理由は、原油高で貿易黒字が若干減ったこともあるが、所得収支の増加には日本企業の海外投資からの配当収入や、1,500兆円の個人金融資産の一部が米国債を中心とした外国債券の債券の利子等。
このように今後は進む高齢化の中で、お金について「持てる民間(一部の)と持たざる政府」という枠組みの中、多くの人が幸せになれるようなお金の分配について議論を深めていく必要がある。
(2007.05.01)
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