高年齢者が働きやすい、働きがいのある職場づくりを目指して~モチベーションを高める工夫~<2022・09・09>

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最終更新日: 2022年9月9日

 今後、長野県の労働力人口は大幅な減少が見込まれ、産業力の低下が懸念されています。労働力人口の減少を緩やかにする方策の1つとして、65歳以上の高年齢者の就労を増やすことが考えられます。ただ、高年齢者層は、体力的な衰えや家庭の事情など個人差が大きいため、若手・中堅世代のように一律の勤務条件で働くことは難しいという特徴があります。また、モチベーションをどう維持し生産性を上げるのかも課題となっています。
 県内で、高年齢社員のモチベーションを上げる環境づくりに取り組む県内企業の動きを紹介します。 

キャリアパスを活用し、モチベーションを維持できるさまざまな仕組みを用意
(有限会社 わが家 高齢者介護事業 上伊那郡宮田村)

 高齢者介護業界は、重労働の割に賃金水準が低い等の理由で、若い世代の人材を集めるのが難しく慢性的な人手不足の状況にあります。
 当社は、2008年、業界の中でも先んじて定年を65歳から70歳に引き上げました。70歳以降は、本人の働く意思と体力があればパート社員として何歳まででも働けるようにしています。
 モチベーションを高める工夫として、キャリアパス(社員が企業内で目標とするポストや職務に就くために必要な業務経験やルートの道筋のこと)を正社員だけでなく、高年齢社員を含むパートタイマー・アルバイトにも活用して、自分の立場・役割が明確になるようにしています。
 人事評価についても、社員全員に対して自己評価を含む360度評価を行い納得度を高めているほか、「育孫休暇制度」というユニークな制度も用意し、孫の世話が必要になった場合に特に期間に制限なく休暇を取得できます。
   

不安やストレスを減らし、高年齢者が安心して働ける職場づくり
(株式会社 竹内農産 漬物製造業 小県郡長和町)

 食料品加工業界は、野菜などの材料の大きさや形などが1つ1つ異なるため、作業の機械化・自動化が難しく、人手に頼る作業が多いことにあります。ところが、水に濡れやすい洗浄作業や力仕事が多いことから人手不足が常態化しています。
 当社は、19年7月に63歳の定年制を廃止しました。退職金は63歳で一旦支給しますが、希望者は、それ以降も嘱託またはパートタイマーとして再雇用しています。
 定年廃止のきっかけは、社員の定年後における1年ごとの雇用契約見直しへの不安の声でした。竹内社長は安心して働ける環境をつくろうと考え、就業規則を変更し、1年ごとの個別契約も無くしました。これにより、高年齢社員が安心して働いてくれています。
 また、本人が希望するできるだけ慣れた職種や生産ラインで働いてもらうようにすることで、高いモチベーションにつなげています。そのほか、休憩時間にリラックスできる工夫や、日々の現場などで気兼ねなく話をすることによって風通しの良い職場づくりを目指しています。
 

熟練エンジニアの処遇を改善し、独自技術の若手への継承にもつなげる
(ネクストリンクス 株式会社 システム開発業 松本市)

 当社は、全ての社員が年齢に関係なく活躍できる働きやすい環境を整えようと戦略的に人事制度改革を進めています。その一環で、22年4月に60歳の定年制を廃止しました。退職金は60歳で一旦支給し、本人が希望すればその後も社員として残り、本人が申告した「現役引退年齢(上限なし)」まで働けます。
 定年制廃止を含む人事制度の刷新をした理由は、一定年齢に到達したことによる就業機会の喪失や役職見直し、給与減額など処遇の低下が、高い技術を持ち顧客の信頼が厚い高年齢社員のモチベーションを下げることになり転職してしまうことを防ぐとともに、独自技術を社内で継承していくためです。
 さらに、勤務形態は、時短、在宅勤務など多様な働き方ができるようにし、60歳未満の社員と同様に目標設定を行い、成果は給与に反映させています。

※詳細は、経済月報9月号「トピックス」に掲載しています。ぜひご覧ください。
 

 

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