県内製造業の医療機器分野参入の動き

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最終更新日: 2017年7月26日

医療機器産業の概要と、企業ヒアリングから得られた参入の特徴

 世界的に高齢化が進む中、医療機器の需要は増加傾向にあります。中でも日本は高齢化先進国として、国内の医療機器市場は緩やかに拡大しています。こうした中、当研究所が昨年実施した県内製造業2,000社に対するアンケート調査でも、「過去5年間に進出した新規事業分野」と「進出を検討している新規事業分野」は、ともに医療分野が最も多くなっています(図表)。そこで、県内製造業の医療機器分野への進出事例をもとに参入のポイントを探りました。

 

 

 アンケートの中で、過去5年間に医療分野に新規参入したと回答した企業に具体的な参入内容についてヒアリングを実施したところ、次のような特徴が分かりました。
 
まず、参入領域では、部材・部品供給が多いことがあげられます。医療機器の部材・部品供給は薬機法の規制の対象外のため、比較的参入しやすく、高度な部品加工を手掛ける先が多い長野県の製造業が得意とする領域です。一方、完成品等については薬機法の規制から参入企業は限られています。
 
次に、参入の契機について尋ねると、「既存取引先が医療機器部門を有していた」、「既存取引先が医療機器メーカーと取引があり紹介を受けた」、「展示会で引き合いがあった」等、既存取引先との関係や展示会の活用が多いことがあげられます。 
 また、医療機器メーカーからの要求事項は、一般の工業品に比べて精度や品質に対する要求が厳しく、特に、キズや汚れ等には慎重な取り扱いが必要となります。このほか、加工材料には、錆びにくいチタンやステンレス等の難削材が使われることが多いため高度な技術が求められるといえます。
 さらに、医療機器の受注数量については多くありませんが、景気変動に左右されにくく受注が安定していることも特徴の一つです。

高いポテンシャルを持つ長野県製造業    

 精密機械工業などの集積が特徴的な長野県製造業は、医療機器分野参入の高いポテンシャルを秘めています。そのため、医療機器関連のサプライチェーンの一角として部材・部品供給を中心に参入の余地は大きいと考えられます。
 県内で核となる企業を育成あるいは誘致して、医療機器関連産業のクラスター構築を進めることは、成長産業育成の一つの方向性となるでしょう。
 おりしも、長野県では、この4月から地方事務所が地域振興局として新たに生まれ変わり、地域振興の観点としてメディカル・ヘルスケア分野をあげる地域振興局は多くあります。産学官金が連携し産業集積を活かした地域一体となった取り組みが求められます。
 詳細は経済月報7月号の調査レポート「県内製造業の医療機器分野参入の動き」に掲載していますので是非ご覧ください。

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