長野県内下請製造業の強みと今後の方向性

(「長野県内製造業の現状と今後の方向性に関するアンケート調査」から) 

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最終更新日: 2017年2月21日

 当研究所は、2016年8月から9月にかけて県内製造業2,000社を対象に自社の強みと今後の方向性に関するアンケート調査を実施しました。これをもとに、県内製造業の中で大きな割合を占める下請製造業について、強みと業績の関連などを整理して、今後の方向性について考察しました。

長野県内製造業の現状と今後の方向性に関するアンケート調査の概要

 まず、今回実施したアンケート調査の概要を示すと以下のとおりです。

アンケート結果にみる下請製造業の現状

県内製造業の6割を占める下請製造業

 県内製造業に、自社の企業形態について尋ねたところ、下請企業が57.2%(1次~3次)、独立企業が24.5%、親企業が18.3%となり、下請企業が約6割と大きな割合を占めました(図表1)。また一次下請が全体の40.7%(下請の中では71.1%)となりました。

 

 

 県内製造業は加工組立型が多く、独自の加工技術などを強みとしています。そして、その強みを多くの領域に技術転用して生き抜いてきました。そうしたことを鑑みると下請企業が多いことも頷けるでしょう。下請企業が多いことは県内製造業の特徴の一つと言えます。そこで、本稿では当該アンケートにおける下請企業57.2%について、強みと方向性を探りました。

 

 県内下請製造業の近年の業績と強み

 今回の景気回復局面の県内下請製造業の業績変化をみるために、12年度に対する15年度の業績を尋ねてみると、12年度と比較して直近の15年度に増収増益となった下請企業は46.5%となりました(図表2)。

 また15年度と比較して3年後の18年度に増収増益予想とした下請企業は38.2%となり、円高懸念などから将来予測は慎重な姿勢がうかがえます(図表3)。

 

 

  そこで、業績と強みとの関係を探るため、増収増益企業とそれ以外の企業の強みを比較したところ(図表4)、 強みの回答項目のうち上位にある「加工技術」、「多品種少量生産」などは共通して高い比率を示しており、下請取引をする上で欠かせない要素となっていることがうかがえます。また、業績の差でみた場合には、「短納期対応」、「試作力」などが、増収増益企業の上位にあがっています。一方、「量産対応」を強みとした企業では、業績を伸ばせなかった先が相対的に多くなっています。これは、量産型の仕事の多くが中国をはじめ新興国に移り、国内では受注はあっても価格競争が厳しく、業績を伸ばせる企業は限られているためと推測されます。

 国内では、高い加工技術力に加え 多品種少量かつ短納期に対応できる生産体制がなくては業績を伸ばすことが難しい状況となっていることがうかがえます。

 また、こうした強みに加え、一次下請(前述のとおり自社を一次下請と回答しているのは下請企業の中で約7割を占めています)として大手取引先の信頼を得ることで、開発段階など川上から関わりながら、受注を獲得し業績を安定させている企業が増えてきていることも近年の特徴にあげられます。 

県内下請製造業の今後の方向性

 下請企業の経営の方向性についての議論ではよく、今後も下請で行くのか、それとも自社企画製品の開発で行くのか、と単純な構図で語られることが多い様に思われますが、下請企業は、実際のところ方向性についてどう考えているのでしょうか。 

 受注製品、自社企画製品に関して今後の方向性について尋ねたところ、今後も「受注製品(下請生産)」を主体とするとの回答が60.7%、「受注製品と自社企画製品」を併用するとの回答が35.5%、「自社企画製品」を主体とするとの回答が3.8%となりました(図表5)。

 「 受注製品(下請生産)」を主体とする意向の企業が6割と大きな比率を占めましたが、どの様な下請をめざすのかを探るため、「受注製品(下請生産)」を主体とする企業に、更に「提案力強化への対応状況」について尋ねてみました。すると、62.4%%が「実施している」、23.3%が「将来考えている」と回答しました(図表6)。自社を一次下請であると回答している企業が下請企業の約7割に及んでいます(図表1)が、大手取引先へコスト削減などにつながる具体的かつ有効な提案を行うことで、単なる下請ではなく大手取引先の利益向上に一層貢献する「パートナー企業」へとランクアップしようとする姿がうかがえます。

  

 このように、 県内下請製造業は、今後、成長分野を中心に大手取引先の「サプライチェーンの一端を担うパートナー企業」という位置づけをより確固なものにしていくことが生き残りの一つの方向性であると考えられます。

 尚、本稿は、当研究所の月刊誌「経済月報2016年12月号」の調査レポートを再構成したものです。

 詳細は、上記レポートをご覧下さい。

 

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