ソーシャルデータを活用した地域活性化プロモーションの可能性

 全国各地で自然、歴史、産業、産品など固有の地域資源を活用し、他地域と明確に差別化を図りながら、行きたい、訪れてみたい、さらには住みたい地域としての価値を高めるために、いかにプロモーションしていくかが課題となっており、雑誌への掲載、ホームページなどとともに、最近、地域や自治体がfacebookやTwitterなどのソーシャルメディアのアカウントを開設し活用する動きも拡大するなどさまざまな方法で情報発信が行われています。
 こうした中、ソーシャルメディアにユーザー(利用者)が書き込んだ日常的なコメントやメッセージといった生の声を分析するマーケティング手法を活用することにより、多くの人の印象に残る地域プロモーション映像を制作し、観光などの振興につなげ地域を活性化しようとする取組が始まっています。

ソーシャルメディアへの書き込みを分析して、傾向を把握するソーシャルリスニング

 facebook、Twitterやブログなどで公開されている文章から、「自然」や「癒し」など目的の言葉に関連するキーワードを収集して、その分析によりトレンドの変化や商品などに対する評価を把握する手法はソーシャルリスニングと呼ばれ、企業のマーケティング活動などに取り入れられてきました。
 近年、普及が進んできた背景には、ソーシャルメディアに書き込まれな膨大な文章データを自動解析する技術で、解析制度の向上により、曖昧で砕けた文章でも、正確に読み取れるようになったことなどのビッグデータ解析にかかわる情報技術の進展があります。
 このソーシャルリスニングを活用することによって、商品開発のための市場分析、自社や競合ブランドに関する意見収集、宣伝効果の評価、利用者にやいする直接の働きかけ(アクティブサポート)などを迅速・安価に行うことができます。
 この手法は、グループインタビューのような従来のマーケティング手法とは異なり、顧客の自然な声を素早く分析できることが最大の利点です。

「若者と自然との距離」の調査結果を踏まえ信濃町の観光PR映像を制作、公開

 長野経済研究所では、観光庁が現在実施している「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」において、信州しなの町エコツーリズム観光協会と連携して取り組む「エコメディカルヒーリングリゾート(環境型健康保養型観光地)事業」(以下「本プロジェクト」という。)の一環として、地域をPRするプロモーション映像を制作、公開しました。
 本プロジェクトでは、プロモーション映像制作の企画段階から、「人と自然の距離」に関する新たなアプローチとして、これまでの地域活性化プロジェクトでは用いられてこなかったビッグデータ処理技術を活用したソーシャルリスニングの特徴に着目し、これを積極的に取り入れてきました。
 ソーシャルリスニングのマーケティング活用と、映像制作はマーキュリープロジェクトオフィス株式会社が実施しました。
 本プロジェクトの対象地域である長野県信濃町の観光資源である森林や湖などの自然が、若者の不安解消や気分転換に寄与するのではないかとの仮説を設定し、この検証のため「日々、どんなことを不安に思っているか」「自然の中でマイナスからプラスへ気分できたことがあるか」について、2013年5月19日〜8月18日の3か月間のソーシャルメディア上の口コミ、コメント等の記事を観察・分析しました。その中から20〜30代の若者の言葉215,096件に注目し、「悩み」「不安」や「仕事」に関する動向を調査するとともに、「自然」に対する期待や効果に関しても同様に調査しました(実施日2013年8月21日)。
 調査の結果、「何も変わらない自分や、毎日の仕事を不安に思う」や「山登りなどをしていて、自然の中では悩みが小さくなった」などの若者の意見や考えが抽出されましたので、これをプロモーション映像のナレーション原稿制作の過程で反映していきました。
 制作された映像は、下記をご覧ください。
 Vimeo https://vimeo.com/83489805
 YouTube http://youtu.be/Z1Lm1czLLus
 2014年1月7日(火)12時に公開された映像は、本編と副編の2本の動画を公開後24時間時点で集計した結果、4,700回を超える再生回数を記録しました(Facebook、vimeo、YouTubeの合計)。
 またFacebookでは、100回を超えるシェアがされコメントでは「すごいタイミングで重なりました…癒しをもらいました。ありがとうございます。^ ^」など、共感やさらに深い考察を語るなど多くの反応をいただきました。結果的にFacebookだけでも公開後24時間で74,688回のリーチを得ることができるなど、大きな反響がありました。
 このような新しいマーケティング手法によるインターネットでの拡散を目的とした映像制作の取組は、新たな地域活性化手法の1つとして展開できる可能性があり、地域PRやイメージアップに効果があると考えられます。
 さらに、今後の展開として、訪問者目線に立ったきめ細かな観光メニューや旅行商品の開発など幅広い活用が期待されます。そこで、今般制作した映像をFacebookやYouTube、vimeoなどのソーシャルメディアや動画共有サービスによって拡散を図り、対象地域のPRおよび活性化を支援していきたいと考えています。

(2014.1.21)

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